老猫の夜鳴き、認知症と決めつけていませんか?獣医師が疑う『甲状腺』のサインと、飼い主が朝まで眠るための対策

『もう歳だからボケてしまったのね…』と諦める前に、一度立ち止まってください。その夜鳴き、実は治療可能な病気が原因かもしれません。

深夜2時、静まり返った部屋に響き渡る愛猫の大きな鳴き声。

「どうしたの?」「大丈夫だよ」と声をかけても鳴き止まない。 撫でても、ご飯をあげても、少し経つとまた始まる。

連日の睡眠不足で、あなたの体も心も限界に近づいていませんか? 「この夜鳴きはいつまで続くんだろう……」という絶望感、獣医師として本当によくわかります。

多くの飼い主さんは、老猫の夜鳴き=認知症(ボケ) だと思い込んでしまいがちです。 しかし、実は「甲状腺機能亢進症」という病気が隠れているケースが非常に多いのです。もしそうなら、お薬一つでピタッと夜鳴きが止まり、また穏やかな夜が戻ってくる可能性があります。

今回は、獣医師の視点から「認知症と決めつける前に確認してほしい病気のサイン」と、今夜あなたが少しでも眠るための「老猫の夜鳴き対策」について解説します。

以下の記事では愛猫の睡眠の質を上げると同時に、あなたの心身を守るための具体的な戦略を解説しています。
こちらもご参照ください。

目次

獣医師が真っ先に疑う「甲状腺機能亢進症」とは?

「認知症かな?」と相談に来られた飼い主さんに、私がまず疑うのが「甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)」です。

名前は難しいですが、簡単に言うと「体が勝手に興奮状態になり、代謝が暴走してしまう病気」です。

甲状腺ホルモンという「やる気スイッチ」のようなホルモンが出過ぎてしまうため、体は常にフルマラソンを走っているような状態になります。そのため、昼夜問わずハイテンションになり、大きな声で鳴き続ける(夜鳴き)という症状が出るのです。

私たちはこれを、別名「元気な病気」とも呼んでいます。 一見すると年齢の割に活動的で若々しく見えるため、飼い主さんが「病気だ」と気づきにくいのが最大の特徴であり、落とし穴でもあります。

その夜鳴き、認知症じゃないかも?チェックリスト

もし、あなたの愛猫に以下の特徴が見られるなら、それは認知症ではなく甲状腺の病気かもしれません。

  • ものすごく食欲があるのに、なぜか痩せてきた
  • 目が以前よりギラギラと輝いて見える(瞳孔が開いている)
  • 性格が攻撃的になり、怒りっぽくなった
  • 毛並みがバサバサになり、毛割れしている
  • 水を飲む量と、おしっこの量が異常に増えた
  • 落ち着きがなく、常にうろうろしている
  • 以前よりも鳴き声が大きくなった、声質が変わった

いかがでしたか?『食欲があるから元気だ』と思っていたら、実は病気のサインだった…というのは本当によくある話です。一つでも当てはまる場合は、動物病院での血液検査を強くおすすめします。

検査で異常なしなら…認知症ケアと環境対策

動物病院で血液検査をして、甲状腺や腎臓などに異常がなかった場合、そこで初めて「高齢性認知機能不全(いわゆる認知症)」の可能性が高まります。

認知症による夜鳴きの場合、特効薬はありませんが、生活リズムを整えることで症状を和らげることは可能です。

1. 昼夜のメリハリで体内時計をリセット

老猫になると体内時計が狂いやすくなります。 日中はカーテンを開けてしっかりと日光を浴びさせましょう。また、無理のない範囲でブラッシングやマッサージをして、「今は起きている時間だよ」と刺激を与えることが大切です。昼間に程よい疲れを作ることで、夜の睡眠を促します。

2. 寝室の安心感を高める

夜鳴きの原因の一つに「不安感」があります。 寝室には飼い主さんの匂いがついたパジャマやタオルを置いてあげてください。また、完全な暗闇よりも、常夜灯などの薄明かりをつけておく方が、視力が落ちた老猫にとっては安心できる場合があります。

飼い主を守るために。「放置」は悪ではありません

どれだけ対策をしても、鳴き止まない夜はあります。 そんな時、真面目な飼い主さんほど「無視したら可哀想」「私が起きて相手をしなきゃ」と自分を追い詰めてしまいます。

獣医師として、はっきり言わせてください。 自分の睡眠を守るために、一時的に別室で寝たり耳栓をしたりして「放置」することは、決して悪いことではありません。

これを「冷たい」「育児放棄だ」なんて思う必要は全くないのです。 飼い主さんが睡眠不足で倒れてしまったり、猫ちゃんに対してイライラして辛く当たってしまうことこそが、双方にとって一番の不幸です。

「老猫の夜鳴きを放置する」のではなく、「共倒れを防ぐために、安全を確保して距離を取る」と考えてください。 お互いが穏やかに最期の時まで過ごすための、必要な「安全策」なのです。

まとめ:諦める前に、まずは病院へ

『ただの老化現象』だけで片付けず、まずは病気を疑ってみる。これが解決への第一歩です。

  • 食欲があるのに痩せる・目がギラギラしているなら「甲状腺機能亢進症」を疑う
  • まずは動物病院で血液検査を受ける
  • 認知症の場合は、昼間の日光浴と安心できる寝室づくりを
  • 辛い時は耳栓や別室への移動も立派な「対策」の一つ

もし甲状腺の病気であれば、投薬治療を始めたその日から夜鳴きが止まり、憑き物が取れたように穏やかな顔に戻る子もたくさん見てきました。 一人で悩まず、まずはかかりつけの先生に「夜鳴きが酷くて…甲状腺の可能性はありますか?」と相談してみてくださいね。


愛猫の睡眠の質を上げると同時に、あなたの心身を守るための具体的な戦略を以下の記事で解説しています。
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この記事を書いた人

40代の獣医師です。現在は企業で品質コンプライアンス(法令遵守)の責任者を務める傍ら、自宅で17歳になる愛猫(雌)の現役介護に奮闘しています。

「獣医学的な正論」だけでは解決できない、シニア猫との暮らしのリアル。専門知識を日々の生活にどう落とし込むか、そして飼い主としてどう心を守るか。

コンプラ担当らしい「論理性・誠実さ」と、飼い主としての「温かさ」を大切に、愛猫との時間が少しでも穏やかになる情報を発信しています。

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