猫の歩き方がおかしい・ジャンプしない…それは「変形性関節症」かも?17歳愛猫の「隠れた痛み」サインと腎臓病の関係

こんにちは、獣医師のとく先生です。

我が家の愛猫も今年で17歳。人間で言えば84歳を超えるおばあちゃんですが、毎日穏やかに過ごしています。

さて、老猫と暮らす飼い主の皆さん。最近、愛猫を見てこう思うことはありませんか? 「最近、寝てばかりで遊ばなくなったなぁ」 「キャットタワーに登らなくなったけど、もうおばあちゃんだから仕方ないか」

その「年のせい」という思い込み、ちょっと待ってください。 実はその「動かない」原因、老化ではなく「関節の痛み」かもしれません。

今日は、多くの飼い主さんが見逃してしまう「猫の変形性関節症」について、獣医師の視点と、私自身が17歳の愛猫に行っているケアを交えてお話しします。 また、この痛みは「腎臓病」のリスクとも密接に関わっているため、早期発見が非常に重要です。


最近、お気に入りのソファーへのジャンプを失敗した

以前より動きがゆっくりになった

そんな変化を「年のせい」で片付けていませんか? 実は、12歳以上の猫の90%以上が変形性関節症を持っているという医学データがあります。ほとんどの老猫が、何らかの関節のトラブルを抱えていると言っても過言ではありません。

この記事では、獣医師が診察室でチェックしている「痛みのサイン」と、それと合わせて確認すべき「腎臓病の初期症状」について解説します。 愛猫の「我慢」に気づき、痛みを取り除いてあげることで、彼らはまた若々しい姿を見せてくれるかもしれません。

目次

「歩き方がおかしい」だけじゃない!獣医師が見抜く「変形性関節症」のサイン

猫の変形性関節症とは、関節の軟骨がすり減り、骨同士がぶつかったり炎症が起きたりして痛みが出る病気です。 一般的に「猫の歩き方がおかしい」と感じるレベルまで症状が進んでいることもありますが、猫は痛みを隠す天才です。もっと些細な変化にこそ、病気のサインが隠れています。

これは老化現象ではありません(チェックリスト)

もし以下のリストに一つでも当てはまる場合、それは単なる老化ではなく、関節痛のサインである可能性が高いです。特に猫の歩き方がおかしいとまでは感じていなくても、以下の行動が見られたら要注意です。

  • 階段の上り下りを嫌がる(特に下り)
    • 前足に体重がかかる「下り」は、関節痛があると特に辛い動作です。
  • 爪とぎをしなくなった
    • 後ろ足で踏ん張るのが痛いため、バリバリと研ぐ回数が減ります。爪が太く巻き爪になっていたら要注意です。
  • 毛づくろいが減り、背中が毛割れしている
    • 体をひねる・曲げる動作が痛いため、背中やお尻まで舌が届かなくなります。
  • 抱っこやブラッシングを嫌がるようになった
    • 以前は好きだったのに、触ると「ウーッ」と怒ったり逃げたりするのは、関節に触れられて痛いからです。
  • トイレのふちに足をかけて用を足す
    • トイレの中に完全に入るのが億劫、あるいは砂を踏ん張るのが痛いサインです。

なぜ「変形性関節症」は気づかれにくいのか

犬であれば、散歩中に足を引きずるのですぐに気づけます。しかし、猫において足を引きずるような動作が見られるのは、かなり痛みが進行した末期の状態です。

猫は本能的に、敵に弱みを悟られないよう痛みを隠す動物です。 初期の段階では、彼らは「痛いから鳴く」のではなく、「痛いから動かない」という選択をして痛みを回避します。

その結果、飼い主さんには「猫がジャンプしなくなった」「寝てばかりいる」=「年をとって落ち着いた」と映ってしまい、病気が見過ごされてしまうのです。

痛みとセットで警戒せよ。「腎臓病」の初期症状

関節の痛みは、単に動きが悪くなるだけでなく、老猫の宿命とも言える病気「慢性腎臓病」を悪化させる引き金にもなります。

痛くて動かないから「水飲み場」に行かなくなるリスク

ここが非常に重要なポイントです。 関節が痛いと、猫は動くのが億劫になります。すると、どうなるでしょうか?

  1. 移動するのが面倒で、水を飲みに行く回数が減る。
  2. 飲水量が減り、脱水気味になる。
  3. 脱水により腎臓への血流が悪くなり、腎臓へのダメージが加速する。

この「痛みによる活動低下→脱水→腎臓病悪化」という負のスパイラルは、老猫で本当によく見られます。

「水をよく飲む」ようになったら要注意(多飲多尿)

逆に、もし急に猫が水をよく飲むようになったと感じたら、それもまたSOSです。 腎臓病が進行すると、体内の毒素を薄めて出そうとするため、薄いおしっこを大量にし、その分喉が渇いて水をガブガブ飲むようになります(多飲多尿)。

これは猫の腎臓病の初期症状として代表的なサインです。

【危険な飲水量の目安】

  • 体重1kgあたり50ml以上
    • 例:体重4kgの猫なら、1日200ml以上飲んでいたら明らかに異常です。

「最近よく水を飲むから安心」ではなく、「飲みすぎではないか?」も必ずチェックしてください。

17歳の愛猫のために私が実践している「痛みケア」と「観察術」

獣医師である私も、17歳のおばあちゃん猫には「痛み」と「腎臓」の両方をケアするために、以下の工夫をしています。

自宅環境の「バリアフリー化」

関節への負担を減らすため、家の中を少し改造しました。

  • トイレの段差解消: トイレの前にスロープや低い台を置き、またぐ動作を楽にしました。
  • 食器の高さを上げる: ご飯や水のお皿を台の上に乗せています。首を深く下げる姿勢は、首や肩の関節に負担がかかるからです。

テクノロジーで「活動量」と「飲水量」を可視化する

ずっと家で見ているわけにはいかないので、私は文明の利器に頼っています。

  • Catlog(スマート首輪)の活用: 「寝ている時間」が増えたのか、「歩行数」が減ったのかをデータで見ています。「今日は歩数が少ないな」と思ったら、どこか痛いのかもしれないと疑えます。
  • 見守りカメラの活用: 私たちがいない時に、トイレに何回行っているか、水を飲む姿勢は辛そうじゃないかを確認します。

よくある質問(FAQ)

最後に、診察室でよく聞かれる質問にお答えします。

Q: 猫の変形性関節症は治りますか?

A: 残念ながら、一度変形した関節を元に戻して「完治」させることは難しいです。しかし、「痛みの管理」は可能です。 最近では、猫専用の副作用が少ない痛み止めの注射(ソレンシアなど)や、関節用サプリメント(アンチノールなど)が登場しています。これらを使うことで、痛みが取れて嘘のように走り回るようになる子もたくさんいます。

Q: 病院に連れて行くのがストレスなのですが、どうすれば?

A: 無理に連れて行かなくても、お家での様子を動画に撮って、獣医師に見せるだけでも診断の大きな助けになります。歩き方がおかしい瞬間や、階段を降りる様子を撮影してください。 また、移動の負担を避けるために「往診」を利用するのも一つの手です。

老猫に優しい「往診」のメリットや、良い往診医の選び方についてはこちらの記事で解説しています。

まとめ:その「大人しさ」は「我慢」かもしれない

「もう17歳だから、寝てばかりなのは当たり前」 私も昔はそう思っていた時期がありました。でも、適切なケアで痛みを取り除いてあげた時、愛猫の目が輝きを取り戻したのを見て、「ああ、我慢させてしまっていたんだな」と痛感しました。

猫は我慢強い生き物です。だからこそ、私たちがその小さなサインに気づいてあげる必要があります。

今日のチェックリストで一つでも当てはまることがあれば、まずは「よく観察すること」から始めてみてください。 それが、愛猫との穏やかで幸せな時間を、一日でも長く続けるための第一歩になります。

▶ 「今の症状は病院に行くべきか、自宅で様子を見るべきか」、その詳しい基準については以下の記事で解説しています。

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この記事を書いた人

40代の獣医師です。現在は企業で品質コンプライアンス(法令遵守)の責任者を務める傍ら、自宅で17歳になる愛猫(雌)の現役介護に奮闘しています。

「獣医学的な正論」だけでは解決できない、シニア猫との暮らしのリアル。専門知識を日々の生活にどう落とし込むか、そして飼い主としてどう心を守るか。

コンプラ担当らしい「論理性・誠実さ」と、飼い主としての「温かさ」を大切に、愛猫との時間が少しでも穏やかになる情報を発信しています。

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