ロイヤルカナンも拒否?15歳からの猫が療法食を食べない時の工夫と、獣医師が実践する『香りの魔法』

こんにちは、とく先生です。愛猫がご飯を食べてくれない…その辛さ、痛いほどわかります。

「今まであんなに美味しそうに食べていた『ロイヤルカナン 腎臓サポート』を、急にプイッと横向くようになった」

そんな経験はありませんか?

特に15歳を超えたシニア期に入ると、昨日まで食べていたものを突然拒否することがあります。日に日に老猫が食べないで痩せてきた姿を見ると、「このまま弱ってしまうのではないか」と絶望的な気持ちになりますよね。

実は、我が家の17歳になる愛猫も、ある日突然ロイヤルカナンを一切受け付けなくなった時期がありました。獣医師である私でさえ、その時は焦りました。

ですが、そこで無理やり口に押し込むのではなく、ある「工夫」を凝らすことで、再び食欲を取り戻してくれたのです。

今回は、獣医師としての医学的根拠と、品質管理のプロとしての視点から、猫が療法食を食べない時の工夫、特に「香りの魔法」についてお話しします。

目次

なぜ「香り」が重要なのか?味覚よりも嗅覚の衰え

まず、焦る気持ちを抑えて、老猫の体の変化について知っておきましょう。

人間と同じように、猫も高齢になると五感が衰えます。特に食事において重要なのが「嗅覚」です。猫は「味」よりも「匂い」で食べ物を認識し、食欲のスイッチを入れています。

つまり、ご飯が美味しくないから食べないのではなく、「匂いがしないから、それが食べ物だと認識できていない」可能性があるのです

腎臓病などの持病があると、尿毒症の影響で口の中が気持ち悪くなり、食欲が落ちることもあります。しかし、それ以上に「香りを立たせる」アプローチが、シニア猫の食欲回復には特効薬となることが多いのです。

工夫1:獲物の体温「38度」の魔法

そこで私がまず試してほしいのが、猫の餌の温めです。 しかし、ただレンジでチンすれば良いわけではありません。品質管理の観点から言えば、「温度管理」こそが最も重要です。

目指すは「小動物の体温」

猫が野生時代に捕食していたネズミや小鳥の体温は、およそ38度〜39度です。この温度帯になった時、肉や脂の香りが最も強く立ち上り、猫の本能を強烈に刺激します。

コンプラ流・精密な温め方

品質劣化を防ぎつつ、香りを最大化する方法は以下の通りです。

  1. ドライフードの場合: お皿に入れたフードに、ドライヤーの温風を少し離して当てるか、お湯で温めたスプーンでかき混ぜて、ほんのり温かさを移します。
  2. ウェットフードの場合: レンジで数秒加熱しますが、必ず指で混ぜて温度ムラをなくしてください。

私は料理用の温度計を使って、38度〜40度になっているか確認することもあります。熱すぎると猫舌の猫は二度と食べてくれなくなるので、注意してくださいね。

ちなみに、食事の温度と同じくらい重要なのが「食事の環境(器の高さや形状)」です。「温めても食べにくい体勢だと食べない」というケースも多いため、環境作りについては以下の完全ガイドも併せてチェックしてみてください。

【完全版】シニア猫の食事管理ガイド:17歳の愛猫と獣医師が辿り着いた「栄養・器・温度・回数」の最適解

工夫2:パッケージを開けたての「鮮度」

次に「酸化」の問題です。 ロイヤルカナン 腎臓サポートを食べないという相談を受ける時、よくよく話を聞くと「2kgや4kgの大袋を買って、開封して1ヶ月以上経っている」というケースが多々あります。

猫の嗅覚は人間の数万倍とも言われます。人間にはわからなくても、猫にとっては「酸化した油の嫌な匂い」がしている可能性があるのです。

  • 小袋(500gなど)を選ぶ: 割高でも、鮮度を優先します。
  • 真空保存容器を使う: 開封した瞬間の香りを閉じ込めます。

「新品の袋を開けた瞬間だけ食べる」という子は、間違いなくこの「酸化臭」を嫌っています。

工夫3:禁断の「トッピング」とリン吸着剤

温めても、鮮度に気を使っても食べない。そんな時は、医学的・コンプライアンス的に「許容範囲」の妥協案を探ります。

療法食は「単体で食べる」ことが理想ですが、食べずに痩せて体力が落ちることの方が、15歳以上の老猫にとってはリスクです。

香りの強いトッピングを活用する

  • 鰹節(かつおぶし)を一つまみ揉んで振りかける
  • 好物の「ちゅ〜る」や一般食の缶詰を少しだけ混ぜる

「えっ?腎臓病なのに鰹節や一般食をあげていいの?」と心配になりますよね。もちろん、大量にあげるのはNGです。

しかし、ここで重要なのが「リン吸着剤」などのサプリメントの活用です。どうしても療法食を食べない場合、トッピングで食欲を刺激しつつ、余分なリンや毒素を吸着剤で排出させるという方法は、獣医療の現場でもよく行われる選択肢です。

『絶対に療法食しかダメ』と追い詰められず、『薬やサプリを併用すれば多少のトッピングはOK』とかかりつけ医に相談してみてください。

まとめ:15歳からの食事は「正解」より「一口」

15歳を超えた愛猫との生活で大切なのは、栄養学的な100点の正解を守ることよりも、「今日、一口でも美味しく食べてくれた」という喜びを積み重ねることです。

  • 38度への温めで嗅覚を刺激する
  • 開封したての鮮度を保つ
  • トッピング+吸着剤という選択肢を持つ

まずはこの3つ、試してみてください。焦らず、愛猫のペースに合わせて工夫していきましょう。

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この記事を書いた人

40代の獣医師です。現在は企業で品質コンプライアンス(法令遵守)の責任者を務める傍ら、自宅で17歳になる愛猫(雌)の現役介護に奮闘しています。

「獣医学的な正論」だけでは解決できない、シニア猫との暮らしのリアル。専門知識を日々の生活にどう落とし込むか、そして飼い主としてどう心を守るか。

コンプラ担当らしい「論理性・誠実さ」と、飼い主としての「温かさ」を大切に、愛猫との時間が少しでも穏やかになる情報を発信しています。

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